徽章と記章の意味や違いは?コサージュや社章との違いも解説
徽章と記章の違いとは?コサージュや社章など似ているものとの違いも解説
「徽章」と「記章」は同音異義語です。徽章(きしょう)は職業や身分を表すしるし、記章(きしょう)は記念として与えられるしるしです。どちらも「身につける」という目的は同じですが、使われるシーンは異なります。
本記事では徽章と記章の違いを詳しく解説するとともに、コサージュや社章など似ているアイテムとも比較して紹介します。
徽章と記章の違い
職業や身分を表す「徽章」と、記念として与えられる「記章」には、明確な違いがありますが、「徽章」の文字を見慣れないと感じる人も多いのではないでしょうか。
実は「徽章」の「徽」は常用漢字に含まれておらず、一般的に「記章」と置き換えられることも珍しくありません。よって、普段目にしている「記章」の中には、「徽章」の意味が含まれている場合もあります。ここからは、徽章と記章の違いや、歴史的背景を紹介します。
徽章とは?
徽章はもともと騎馬武者が担ぐ「旗印」を指していました。現在は身分・職業・階級などを示すものとして用いられています。具体的なアイテムとしては、バッジ、メダル、ボタン、ワッペン、トロフィーなどがあります。弁護士バッジや軍隊のバッジも徽章の1つです。
先述のとおり、「徽」は常用外漢字のため、新聞や公用文書では「徽章」ではなく「記章」と記載されています。よって、「記章」と書かれていても、職業や身分を表す「徽章」の意味で用いられている場合もあります。
徽章の歴史
諸説あるものの、「徽章」の歴史は西暦600年頃からはじまったといわれており、日本では1875年に制定された文書にて「徽章」の文字が確認できます。
日本では古来より武具が用いられてきましたが、明治期の文明開化を皮切りに、急速に西洋文化が広がっていきました。武具で用いられてきた紋章や家紋が、職人の手によりボタンや装身具へと変化していきます。徽章は錺師(かざりし)や金工師と呼ばれる職人の手で育まれてきました。
東京では徽章を専門に取り扱う有力な「徽章屋」が登場して、横浜・名古屋・大阪へと広がっていきました。徽章屋は当時比較的安定した職業であったため、もともと錺師の多かった浅草・下谷を中心に活気付いていました。その後、昭和になると、太平洋戦争開戦により軍関係の受注が相次ぎ、民間業者が思うように勲章を製造できなくなります。
徽章業界の大きな転機となったのは1964年に開催された東京オリンピックです。オリンピックの象徴である五輪をあしらった製品を製造するため、全国記章事業推進会が発足して成功に導きました。東京オリンピック以降も、徽章作りに関わる人々は日本で開催されるさまざまなイベントを影ながら支えているのです。
記章とは?
記章は、参加者、関係者がイベントや式典の記念に贈られるしるしです。具体的なアイテムとしては、記念バッジ、入学式・卒業式のリボン記章などがあります。
「記章」と「徽章」は元来違う意味を持つ言葉ですが、両者の垣根は曖昧になっており、前述した「徽章」を指す場合もあります。近年では国連が主導している持続可能な開発目標の一環として、SDGsバッジをつけている人も見られます。
コサージュの違い
コサージュとは、入学式や卒業式などの式典の際、胸元につける花飾りを指します。コサージュはもともと中世ヨーロッパの習慣でしたが、「将来の安全や健康を願う」という意味が込められていることから、日本の式典でも用いられるようになりました。男性用のコサージュは「ブートニア」と呼ばれています。
入学式や卒業式では、コサージュではなくリボン記章が用意されていることもあります。リボン記章は赤と白で作られていることが多く、バラのようなかたちが特徴です。お祝いの意味に加えて、名札としての役割があるため、参加者は同じデザインのリボン記章を身に付けています。
社章との違い
社章とは、「身分」ではなく会社の一員であることを示すものです。会社名や企業ロゴがデザインされており、一目でその会社の社員であることがわかります。
社章のかわりにカードタイプの身分証明書を採用する企業もあり、活用の仕方は会社によってさまざまです。部署や階級によって異なる場合は、徽章のような意味合いを持つケースもあります。
つける位置によって呼び方が異なる
徽章はつける位置によって呼び方が異なります。
● 洋服の襟部分につけるもの:襟章(えりしょう)
● 胸につけるもの:胸章(きょうしょう)
● 腕をくぐらすようにつけるもの:腕章(わんしょう)
● 肩の線に沿ってつけるもの:肩章(けんしょう)
腕章は学校行事の役員章、肩章は軍服の階級章などで使われています。
まとめ
「徽章」は職業や身分を表すしるし、「記章」は記念として与えられるしるしで、元来は異なる意味を持っています。しかし、「徽」が常用漢字ではないことから、しばしば混同されて用いられているため、正しい使い分けが難しいかもしれません。
徽章や記章の他にも、コサージュや社章などが似たアイテムとして挙げられ、また、徽章はつける場所によって、襟章・腕章・肩章など呼び方が異なります。